記事投稿日 : 2020/08/17 ひとり言

塾長のひとり言 「国語力」の正体

その万能な使い方と、低学年からでもできる伸ばし方

「小さいうちからやっておいた方がいい習い事や勉強ってありますか」

塾の先生という仕事柄、訊かれることの多い質問です。基本的には好きなことをやらせてあげてくださいと伝えるのですが、よく付け加えて「国語力を伸ばしておくと、後で楽ですよ」とお話しします。

本日はそんな万能な力「国語力」の正体に迫っていきます。

そもそも国語力とは

「国語力ってなんですか?」

そう生徒や保護者の方から質問されたときに、いつもお伝えする一言があります。

○○力というのは便利な言葉ですが、とっても抽象的なので、具体的に示しておかないとその後のコミュニケーションで困ることがあります。ちなみに、「具体的」とは、お互いが同じものを思い浮かべられることをいいます。「野球選手」はどちらかといえば抽象的で、「イチロー」は具体的ですね。

前置きこのくらいにして、早速その一言をお伝えします。

僕が考える国語力とは、「相手の求めているものを返す力」です。

例を出して説明していきます。お母さんと子どものやり取りを想像してご覧ください。

「何食べたい?」

「筆箱!」

「!?」

これは国語力のない会話の例です。相手の求めているものを返せていませんね。本当に筆箱が食べたいなら問題はありませんが、僕は今までそんな人は見たことがありません。

これを国語力のある会話の例に直してみましょう。

「何食べたい?」

「ハンバーグ!」

「じゃあ、今から作るね」

会話らしくなりました。そう、後述しますが、国語力は勉強だけではなく、コミュニケーションにおいても重要な力です。

では、ここからさらに国語力を高めてみます。どんなことが起こるでしょうか。

「何食べたい?」

「(そう言えば余り物のパスタとベーコンがあったな。時間がないって言ってたし、これがいいんじゃないかな)ペペロンチーノ」

「(助かったわ)じゃあ、今から作るね」

どうでしょう。巷ではこれを「空気を読んだ会話」なんて風にも呼びます。本当の親子間でここまで気を遣う必要はないかもしれませんが、荒波が打ち寄せる現代社会の中では、この空気を読む力が必要不可欠になるときもあるのです。

「相手の求めているものを返す力」国語力の正体が掴めてきましたか。

また、この国語力は、さらに色んな力を秘めています。語彙力や論理的思考能力、表現力や作文力、インプット力にアウトプット力…、挙げればキリがありません。その伸ばし方は後述していきますが、まずはこの力の使い所について説明していきます。「万能の力」としているだけあって、あらゆる局面で活用ができますが、ここでは大きく分けて2つの使いみちをご紹介します。

国語力の使いみち ①勉強で使える!

塾ですので、まずは勉強のお話からしていきます。

当然のことながら国語力は勉強においても大切です。それどころか、すべての科目の基礎とも言えるぐらいの代物です。国語だけでなく、算数(数学)や英語あ実技科目にだって大切です。

これも例を挙げて説明していきます。

勉強の成果としてテストが利用されることが多いですよね。そのテストは「相手の求めているものを返す」ものです。まさしく国語力の本領発揮する場所です。口頭でも、ペーパーでも、コンピュータを使ったテストでも、あなたに何かを求めてくるのは変わりません。ここで国語力の出番です。

「リンゴは何色ですか?」という問いに正解にするには、「リンゴ」や「色」といった語彙が必要ですし、「リンゴは赤色」等といった知識もいる、「いや、青い場合もあるな。ここで訊かれているのはどれのことだ」といった論理的思考能力も必要です。

国語力が低いと、相手の求めているものが読み取れなかったり、適切な答えが返せなかったりします。そもそも問題が何を言っているのかわからなかったり、「どんなとき?」って訊かれているのに「○○なこと」って答えたりするのはその典型です。

逆に言えば、国語力があればテストは楽になります。良いか悪いかは別にして、「ここは解の公式の単元だから、解の公式を使うんでしょ」みたいに相手の意図を読んだりすることもできますからね。

さらに、国語力は知識を入れるときにも役立ちます。テストのときだけでなく、普段の勉強やテストの準備にも役立つということです。下の図をご覧ください。

図の青い部分が「国語力」です。土台のようなイメージです。ここがしっかりしていると、知識は積み重なっていきます(左側)。右側のように国語力がしっかりしていないと、せっかく入れた知識もどんどんこぼれていってしまいます。授業でもらった説明や知識があっという間に消えてなくなってしまうのです。

知らない言葉や読めない単語が覚えにくいのと一緒ですね。イメージができない得体のしれないものは脳がどんどん捨てていきます。だから、本来はつながって広がっていく知識も各々が結びつかずに、まるでザルに水を注ぐように落ちていってしまいます。これでは、せっかく勉強を頑張っても、なかなか成果に結びつきません。なぜなら、頭にストックされないのだから。

テストの際、「わからない言葉が多い」「読めない漢字が多い」「そもそも読む気が湧かない」という方、テストが返ってきたとき「あっていると思ったのに間違っている問題が多い」という方は、注意が必要です。勉強不足もあるかもしれませんが、国語力不足も疑いましょう。

もちろん、科目ごとの勉強はとても大切です。しかし、その前に国語力をつけておかないと、いくらやっても伸びが悪くなってしまいます。それでは勿体ない。

国語力の伸ばし方も後述するので、苦しんでいる方は参考にしてみてください。大丈夫です。今この【ひとり言】をここまで読み進めてこられた方には国語力の素質ありです。

などど、冗談っぽく言っている場合ではないですね。このままではどんどん長くなってしまうので、次の使いみちに移ります。

国語力の使いみち ②コミュニケーションで使える!

「万能の力」国語力は、もちろんコミュニケーションでも使えます。

国語力の高い人は、「空気が読める」「会話が面白い」「聞き上手」「頭の回転が速い」「説明がわかりやすい」と言われることが多いです。

語彙が豊富で論理的な思考ができて表現も多彩なので、相手の話もわかるし、求めている返答ができるわけです。理解も早く、なにをやってもそこそこ習得が早いです。

逆に国語力が弱い人は、相手の言っていることを読み取れず、自分の言いたいことを伝えられず、コミュニケーションを楽しめません。ひどいときには騙されてしまいます。詐欺防止にも国語力は重要です。

「えっ、何で?」と思った方。実は国語力が高いと物事の裏面を読むことができるのです。何かうまい話をされたときも、「相手の求めていること」に敏感になって、表面上の言葉を鵜呑みにするのではなく、それによりどんなメリットがあって、どんなデメリットがあるか、自分と相手はどうなるか、周りの人はどうななるか…、等を想像し適切な判断をしやすくなるわけです。

長くなってしまうので、国語力の良さは一旦ここまでにします。また機を見て紹介していけたらと思います。

そして、お待たせしました。実はこの国語力は、簡単に鍛えることができます。もちろん、時間はかかるものではありますが、勉強が苦手という方でも大丈夫です。小学生低学年やもっと前からのトレーニングも可能です。

それでは、「相手の求めているものを返す力」国語力鍛え方、オススメの3つの方法を紹介していきます。

国語力の伸ばし方 ①本を読む

国語力の鍛え方ひとつ目は、端的に言ってしまえば「読書」です。

誤解を恐れずに言えば、読むものは何でも構いません。特に最初のうちは気にしなくて大丈夫です。絵本でも、新聞でも、ライトノベルでも、漫画でもいいです。

自分で読むのではなくて、読み聞かせでもいいです。ん?読み聞かせでもいいです、言いましたが、上手な人がやるなら読み聞かせのほうがいいです。

わからない言葉や表現を本人に合わせて解説ができたり、音やイメージと併せてその子の世界を広げることができるからです。これは小さなお子さんだけではなく、高学年や大人にとっても効果的です。時間はかかりますが、自分一人で読むよりも国語力の上昇を促します。

どちらにせよ大事なのは、知っている言葉の意味を確認したり、言葉を知ったり、自分の内にない考えを見つけり、自分の知らない世界に出会うことです。また活字慣れや表現技法、言葉の使い方等を学ぶ効果もあります。

それが語彙力や論理的思考能力、作文力等につながるわけです。しかも人間はもとより物語好き。「本が嫌い」という小さな子どもはまずいません。好きなもので楽しみながら学べるというのは大きいですね。

読書に慣れてきたら、自分があまり興味のない分野に手を出してみましょう。興味が無いということは自分の中にあんまり情報がない分野だったりします。そんな本は読むだけで、飛躍的に語彙が増え、頭の中に多くの考え方の引き出しが備わっていきます。

好きな本を何回も読むというのもいいです。同じ本でも読むたびに気づきは増えるはずです。「色んな角度から考えると味方が変わること」も学べます。また、文章を覚えるくらい読み込むことで、自分が文章を書くときの参考にもなります。また、過去には発見できなかった心の機微や謎を見つけることで、国語力のレベルアップ具合を確認することもできます。

読めば読むだけ国語力の経験値は貯まったいきます。それを続けていけば、自分でも気づかないくらい静かにひっそりと、知らない間に、でも確実に国語力はレベルアップしているはずです。

あなたが保護者の方で「じゃあ、子どもに読書をさせよう」というときの注意点は《決して強制しないこと》です。人からやらされるものは面白くありません。せっかくの読書をつまらなくさせないように、読み方や読む本に口を挟むことは極力やめてあげてください。

途中で投げ出していたとしても、それが無駄ということではありません。大人の私たちですら途中で飽きてしまう本はありますよね。放っておいて、例えば図書館や本屋さんに行く機会を増やして、本人にとってもっと素敵な本に出会う可能性を上げていきましょう。

「でも、読書は苦手だなぁ」という方、他にも国語力を伸ばす方法はあります。それでは次の鍛え方に参りましょう。

国語力の伸ばし方 ②人と話す

「うちの子、本を読むことが苦手で…」というときに、「国語力が伸びるから」といくら読書をさせようとしても徒労に終わることが多いです。

そんな悩みを持つ保護者の方には、こんなことをオススメします。

いっぱいお話をしてあげてください。見たもの、聞いたこと、気づいたもの、面白かったこと、嫌なことや不思議だなと思うことについて、たくさん話をしたり聞いてあげてください。それだけでも国語力は伸びていきます。

語彙が増え、考え方の幅が広がり、表現の仕方が身についていきます。活字慣れは期待できませんが、国語力の土台作りには有効です。

ちなみに、そのお話のお相手は、親じゃなきゃいけないということはありません。子ども同士でもいいのですが、国語力をつけるという意味では、やっぱり大人の方がいいでしょう。理想は色んな大人の方と関わらせること。考えの幅が広がります。特に、国語力の高い大人と話をすることは、子どもたちに劇的な効果を与えます。積極的に出会わせましょう。

ちなみに「国語力」の高い大人とは、話が面白い人、深いコミュニケーションができる人、人間性が高い人、深みのある人です。一言で言うと、魅力的な人です。

話すことだけではなく、色々な経験をすることでも国語力は伸びていきます。色んな場所へ行きましょう。色んなことに挑戦しましょう。色んな人に会って、色んな考え方を知りましょう。そのすべてが国語力につながります。

ぼんやりと生きるより、一生懸命生きているほうが、国語力は高まります。経験の回数も、密度も増えるので、それに比例して国語力もアップしていきます。

国語の伸ばし方 ③問題を解く

最後の国語力の鍛え方は、「問題を解くこと」です。当たり前と言えばそうですね。当たり前ですが、皆さんはそんなに問題を解いているでしょうか。

算数や英語に比べて国語の問題は軽視されがちです。しかし、日本に暮らす子どもたちにとって、最も大事な科目が国語と言っても過言ではありません。英語の問題ですら基本国語で書かれているのですから。

もちろん、他科目の問題を解いても国語力を伸ばすことはできますが、やはり国語力アップに効果が大きいのは、「国語の問題を解くこと」です。漢字や読解、作文で力を磨きましょう。

読める漢字が増えれば語彙につながります。指示語や接続詞などの使い方を身につけていけば、相手の言いたいことが読み取りやすくなります。文法を知れば、難しい文章と向き合えるようにもなるし、作文力がつけば、自分の言いたいことを相手に伝えやすくなります。

すべては「相手の求めているものを返す」練習です。漢字や文法や技法や言葉はそのためのアイテムです。国語の問題を解きながら、各種アイテムの使い方を覚えていきましょう。

以下にお家で国語の問題を解くときの要注意ポイントをまとめておきました。最低限のものになりますが、参考になれば幸いです。

・知らない語句は印をつけておくなどして後で調べられるようにしておく
・プチ記述問題は国語力のチェックにちょうどいい。例えば「のどがかわくときはどんなときか答えなさい」という問題に「○○なとき」で答えられていない場合(「暑いこと」や「暑い」と答えてしまっていた場合)、なぜ答えられなかったか理由をはっきりさせて対処できるといい。相手の求めているものを返す、という考えのいい例になる
・余裕があれば音読する
・間違えた問題は特にその答えを選んだ理由を言わせる
・間違えを悪としないこと。それは成長の最大のチャンス。間違えた問題を次にできるようにするのが「勉強」

もし質問などある場合は、お気軽にお問い合わせフォームからメールをください。私で良ければ、可能な限りアドバイスさせていただきます。

「相手の求めているものを返す力」国語力についてはここまでにします。

本日も出雲市の個別指導塾 すずかけの木にお越しいただきありがとうございました。国語力を身につけて、勉強だけではなく魅力のある人になってください。