昔のことです。
まだ僕がある個別指導塾の教室長だった頃、教室の奥で生徒のK君と講師がこんな話をしていました。一応前置きで伝えておくと、既に信頼関係ができている生徒と講師です。
「頑張ってるからいいじゃん!」
「いやいや、それっておかしいよ」
どうやら勉強方法についての話みたいです。聞き耳を立てます。
「だって夜の方が集中できるし、なんで頑張ってんのにダメなの?」
どうやら徹夜で勉強の話か。稀に極端な夜型の人もいるはいますが、本当に稀です。学校生活や日常生活に支障がなければいいとは思うのですが、大体支障があります。気をつけないと、深夜の勉強はほぼほぼ自己満足になりがちです。
「でも、今ここや学校で寝ちゃうなら意味ないでしょ。それってさ、頑張ってるっていいながら、頑張ってる自分に酔っているやつだよ。頑張るべき時に正しく頑張らなくちゃダメだよ」
正論に対して、生徒もまだ反撃したそうです。この後の流れが秀逸でした。
「例えばさ、マラソンランナーが練習頑張ってます!本気で金メダル狙います!って言いながら、サンダルでマラソンの練習してたらどう思う?」
思わず僕が笑ってしまいそうになりました。生徒も一瞬間を空けた後、「え、どういうこと?」と聞き返します。
「例えばの話ね。科学的根拠もなく、絶対に良くないと思われる練習をしているのって、頑張ってるって言うのかな?Kがコーチだったら、それ許す?何度も注意したのにそれを続ける選手に向かって、オッケーオッケー頑張ってるな、グッジョブって言う?」
何それ、とか言いながら生徒も想像を膨らませた様子です。すぐに、「たしかに言わない」と返答していました。
一気に場の雰囲気が明るくなって、勉強の仕方の注意をしていたのが嘘のよう。
「確かに、たとえサンダルだろうが、人によっては練習しているだけで褒められるって場合もあるよ。それはわかる。でも、今のKは受験生でしょう。やって褒められるって段階は卒業しなくちゃ。一緒にやり方を整えよう。変われる?」
生徒も「うん」と気持ちよく頷いている感じでした。実に素晴らしい流れでしたね。これって、深夜の勉強以外にも色んな物事に対して使えそうですよね。
もちろんいつもこういう綺麗な流れでいくとは限らないですが、自分の引き出しの中に入れておいて、たまに使わせてもらっている素晴らしい喩えでした。
今回は見習いたい会話のご紹介でした。
本日も出雲市の個別指導塾 すずかけの木へお越しいただきありがとうございました。 その時その時で相手に対するベストって変わるものだから、引き出しには沢山入れておきたいよね。